月亭可朝「真昼の四谷、可朝の会』

 47年間生きてきて、歌をうたってきて、色々な人間に出会えた。表現者、アーチストの類いに。その中でも、落語家というのは一番何というか厄介というか、一筋縄ではいかない手強いひと、という印象がある。とにかく耳が良く、ものを見ている。非常に繊細でいて、狂っている。
 落語というのは、江戸時代に作られた噺があり、それを自分で演じる。音楽で言うところの「カバー」と言えばそうだが、これがまた同じ噺でも、演者によって全く違う。特に道具もなく、舞台の効果や演出もなく、ただ、おっさんが座布団の上に着物を来て座って話す。そんな高座で、目の前で何が起こってるのか全くわからなくなった体験を自分は幾度か持っている。


 落語家、月亭可朝さんのベストアルバムの新曲をプロデュースさせて貰った。過去の歌の音源、新しい音源、そして語り。語りは発売元のP-vineの会議室で録音させて貰った。幾つかお話を聞かせて貰った中で、「今までの芸人生活を振り返って、どう思われますか?」という問いかけに可朝さんはかなり率直に話してくれた。この録音を残せただけでも、自分が関わった意味はあったのではないかと思うくらいで、是非聴いて欲しいと思う。
 そのベストアルバム『ザ・月亭可朝ベスト+新曲』が11月15日にP-vineから発売。そして、可朝さんが参加する渋谷での落語会が25日に決まり、これは都内でインストアライブをやりましょうってなったが、さすがに可朝さん、インストアには積極的にはなれず。考えてみればそりゃそうだ。あれだけの高座をするひとが、タダで人前で「店頭ライブ」やるなんておかしな話だ。
 それで急遽、ライブハウスでのイベントを組むことに。可朝さん「わしの会なんか成立するんかいな」とはじめちょっとぐずっていたが、「大丈夫です!可朝師匠を見たいというひと沢山いてます!」と珍しく自分にしては押して、ようやく、やりましょう、と。
 しかし、レーベルのP-vineはインストアはやれるけど、レコ発は「ノウハウがない」と言う。では、仕方ない。自分が主催することに決意して、今回自分のレーベル、ハプニングレコード主催ということになった。ハプニングからは可朝さんの『いってる北朝鮮 ep』を夏に出したので、形式的には別々のレーベルの2枚のレコ発に。無茶ぶりってこんなことはないけど、やるとなったらおれはやるから。
 ハコは四谷のアウトブレイク。夏にここで一人でオールナイトライブやらせて貰ったり、早朝GIGに出させて貰ったり、お世話になっているライブハウス。
 鼎談のゲストに、都築響一さん。ちゃんとお会いしたことはないけど、快諾して頂いた。ぼくと可朝さんの話だと、ちょっと緊張感で張りつめそうなので、都築さんに会話の交通整理して頂きながら、何か鋭い観点でお話が出来たら。
 余興ゲストには、華が欲しくなり、IKAZUGOKE(北村早樹子+飯田華子)に。音楽紙芝居をやってくれる。
 北村さんは「いってる北朝鮮 ep」、すぐ聴きたいと言ってくれ、店に置かれる前にさっと送ったら、その後、可朝さんの独演会に来ていた時に、CD代金を封筒に入れて渡してくれた。細かなことだが、こういうひとは滅多にいない。
 そして最後には月亭可朝のギター漫談。これ、なかなか都内では聞けない。

 正直、自分のことで精一杯で、ましてやずっと歳上の噺家さんのイベントを組むなんて、かなりのプレッシャーではある。でも、よく考えたらこんな楽しいことはないと気づくわけで。集まってくれる演者さん、手伝ってくれる友人ら。そして、お客さん。昼間のひとときが、どんなものになるのか。未知なるものとの出会い。
 自分もシンガーソングライターとして以外は人前には出ないし、何かやろうと思わない。けど、月亭可朝さんだけは別。ライブハウスでの生は、自分がやらないと見れないものだから。何とか皆さんの力で盛況にして、可朝さん、これからもちょくちょく東京に来てくれたらと思う。来年、八十歳だけど元気だから。

 四谷でお会いしましょう。

 豊田道倫

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ハプニングレコード主催
月亭可朝  『いってる北朝鮮 ep』『ザ・月亭可朝ベスト+新曲』CD発売記念イベント〜真昼の四谷、可朝の会
11.25(土)四谷アウトブレイク
出演:月亭可朝
ホスト:豊田道倫(CDサウンドプロデューサー)
鼎談ゲスト:都築響一
余興:IKAZUGOKE(北村早樹子+飯田華子)

開場 11時半 開演 12時
予約¥2000 当日¥2500(共に入場時に1ドリンクオーダー)
KIDS割引(小学生まで無料。入場時に1ドリンクオーダー)
予約:info@hor-outbreak.com 
アウトブレイク http://www.hor-outbreak.com/access.html