8.12ベアーズ 豊田道倫 興行企画に寄せて

月亭可朝師匠にお会いしたのは大雪の日だった。知り合いを通じて、浅草の寄席の楽屋で話せることになった。とらやの羊羹を持って行った。その時考えていたライブのゲスト出演は日程が合わず叶わなかったが、楽屋で可朝師匠は優しく接してくれ、新しい曲への構想を少し話してくれた。それはとても興味深く、ずっと心に引っ掛かっていた。とても聴いてみたい、と。

それから、自分のデビュー20周年記念のアルバムに取りかかり、時間がなくなってしまったが、可朝師匠のことはずっと心に引っ掛かっていた。そして、ようやく少し落ち着いた今年のはじめに思い切って手紙を出した。電話を頂いた。大阪に行く時、タイミング合えばお茶でもしましょうと言ってくれた。勿論、まず、可朝師匠の新曲を出したい、という旨を伝えた。

そもそもなぜ、月亭可朝師匠に惹かれたのか。吉川潮氏が可朝師匠のことを書かれていたものを読んだことが大きいが、何らかの勘としか言いようがない。米朝師匠の筆頭弟子、「嘆きのボイン」、カンカン帽、二度の出馬、野球賭博、、等、可朝師匠を語るキーワードは割とたやすく出て来るが、そういう部分ではない。世間が貼りたがるレッテルをそのまま受け止めながらも、実はそこにいなく、しなやかに生きている。それは高座を見た時、感じた。
また、『ユリイカ』の立川談志桂米朝、共に追悼号で可朝師匠のインタビューは大きくページを割かれていた。破天荒に生きた芸人、というイメージの可朝師匠だが、そこには冷静で批評的であたたかい言葉が沢山あった。

常々、可朝師匠が言われている「発想」という言葉がある。芸人として、人間として、自分の頭で考えて決めて、やる。出来るようで、一番むつかしい。だが、可朝師匠はいつもそれをやろうとしている。他に、そういうひとをぼくは知らない。

大阪の新阪急ホテルのロビーで可朝師匠とお会いした。二時間半ほどお話して頂いた。新曲は以前お話しして貰ったテーマではなく、また新しいテーマで作りたいと。それは、可朝師匠にしか作れないんじゃないかと思う、ある意味過激なテーマであるが、誰も作ったことない歌になるのは間違いない。流石だな、と、少しおののきながらも感激した。そして、これは何としても形にせねばと思った。

それから、川田晴久美空ひばりのCDをお送りしたり、新曲の参考になればと資料を送らせて貰ったりした。その度に可朝師匠からお電話を頂いた。

今回ベアーズへの出演は快諾してくれた。ご高齢であるので、何が出来るかわからないが、一言二言でもご挨拶出来ればと。その言葉だけでも有り難く思えた。芸人として、月亭可朝がライブハウス、ベアーズのステージに立つ。是非、見に来てほしい。

そして、工藤冬里、SOLMANIA。なんだこの組み合わせは?!と思われるかもしれないが、自分としては繋がっている。パンク、ノイズ。そして、スカムの自分。月亭可朝は、ギターが弾けず、3コードを教わっただけで「嘆きのボイン」を作って、ヒットさせた。「音楽は本来のフォーマットにこだわらないと、面白いものにはならない」。色々聴いてきたけど、結局そう思う。いや、本当にそうなのか?私たちはひょっとしたら、無理して無難に上質ということで、つまらないものに身をゆだねていないか。まだまだ、もっと面白いことあるんじゃないか。この4組のライブは、そこが焦点となる。未来へのイベントを8月12日ベアーズで開催する。


皆と語りあえるような夜になれたら_。

豊田道倫

_ _ _ _

豊田道倫 興行企画『ホルモン、ビール、ナポリタン、コーヒー』
8月12日(金)なんばベアーズ

開場 18:30開演 19:00 前売り¥3000 当日¥3300
出演:月亭可朝工藤冬里、SOLMANIA、豊田道倫
PA:西川文章

前売り:ベアーズにて、店頭販売、電話予約(06-6649-5564)、メール予約(info@namba-bears.main.jp)