3_29_土

午後、近所で花見。目黒川沿い、人が溢れていた。家族でカフェでお茶を飲んだ。

夜、渋谷NHKホールで、佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドのコンサート。1曲目からライブで聴くのははじめての初期の曲が続き、自分が佐野さんの音楽を聴いていた10代の頃を思い出す。新作『COYOTE』からは3曲の演奏で、これは『COYOTE』のメンバーとは違うので、曲自体もちょっと違った印象だったが、kyonさんがオルガンで参加した「黄金色の天使」はアルバムの印象と同じで、それがより前に聴こえてよかった。佐野さんのヴォーカルは時折シャウトの後では、掠れてしまうのだが、それがたまならくかっこよかった。今回の佐野さんのコンサートは、深刻な歌はなく、ファン・ソング中心だったが、一晩でもそのような場を作れるのはすごい仕事だなあと思う。

ライブが終わり、佐野さん、kyonさんに挨拶。佐野さんに会うのはいつもひどく緊張する。鋭い眼をしている。

この間、新高円寺クラブライナーで共演した「壊れかけのテープレコーダーズ」のメンバーの中に、1985年生まれの方がいて驚いた。85年と言えば、自分は中学の卒業の年で、その卒業式の前日に佐野さんの『VISITORS』を買って聴いた。

そのサウンドは、それまで自分が耳にしていた音楽とは違って、音の中にまるでドラッグや拳銃が隠されているような危険さがあり、それでいてポップな気分にさせるというものすごい物だった。音楽を自分でやってみたい、ひょっとしたら自分みたいな人間だからやれるんじゃないかと思ってしまった。その直感が当たっていたのか間違っていたのか未だにわからないが、自分が作りたい物は案外ずっと変わっていないのかもしれない。

ホールを出たら、外は冷えていた。東京タワーが見えた。センター街へ出て、かむくらのラーメンを食べた。大阪のミナミでしか食えなかったものが、渋谷と新宿の繁華街のど真ん中で食える。10年程前は大阪に帰ったら、まず何はともあれ道頓堀に向かって、狭い路地の中にある店の前で立って並びラーメンを食べて、それから珈琲の青山で真夜中に女の子と待ち合わせしたりした。

目黒駅から帰宅する途中、目黒川沿いにずっと赤く灯された提灯を眺めながら、自分の生活はハードではあるが、なんだか夢の中にいるようだなと思った。年に一度近所で、夜桜を灯す赤提灯の下を歩けるのはいい。