11_13_金

新宿駅構内で、あるフォークシンガーを見た。土産物屋の前にいた。ギターケースを二本抱えていた。これからツアーに行くところだろう。60歳前のシンガーの目は若々しかった。自分が恥ずかしくなった。

ネットで予約して1200円のチケットを買って、マイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』を見た。亡くなる前、ロンドンのアリーナで50回の公演のリハーサルをしていた映像。会場にセットを組んでのリハーサルで、その規模の大きさに驚いた。ダンサー、バンド、照明、映像他のクルーの人数の多さとレベルの高さ。楽しませようということを徹底して、マイケルはちょっとした間や余韻の確認には厳しかった。話す声は小さく、大人しく、スターの雰囲気ではなかったが、一旦曲が始まると全く手を抜かない。舞台監督が興奮してくると「ロックンロール!」と叫ぶのが面白かった。
マイケルは「ファンは日常を忘れたがっている。未知の領域を見せてあげないと」と言う。日常の退屈やひどさを、ひょっとしたら一般人よりもわかって知っているかのようで、ひょっとしたらマイケルこそが日常を忘れたがっているのかもしれないと思った。
次代へのメッセージをしっかり持って、ぶれない姿に、もうこんなひとは現れないのだろうと泣きたくなった。クルー達はマイケルの悲報をどんな思いで受け止めたのだろうか。そんな姿は映ってないが、きっと泣き叫んで死ぬ程悲しんだのだろう。映ってない部分が後で迫ってくるすごい映画だった。

小雨降る中帰宅して、食事して、安い酒を飲んで、すぐ寝てしまった。

昨夜、寝る前息子が急に改まったような、何か考え込むような表情をして「ねえ、パパー」と言ってきて、一瞬ドキッとしたが、「なんだい?」と聞くと「...ポニョって、人間?」とたずねる。「うーん、ポニョはお魚だったんだけど、人間になったんかな」と曖昧にこたえてしまった。息子は「人間も水の中いたよー」とポニョのことを人間と思っているかのようだった。もう一度映画をちゃんと見直さなければ。